猛暑が当たり前になってきた日本の夏。
本州では連日35℃を超える日が続く中、「ここは本当に日本なの?」と思えるほど涼しい街があります。
それが、北海道の東に位置する釧路市。
7月・8月でも平均気温は20℃前後、真夏日(30℃以上)はほとんどなく、夜には肌寒さすら感じることも。
実際に、釧路市内では「エアコンのない家」も珍しくありません。
なぜ、釧路だけがこんなにも冷涼な夏を過ごせるのでしょうか?
この記事では、親潮の影響、海霧、気圧配置などの科学的な視点から、釧路の“涼しさの秘密”を詳しくひも解いていきます。
釧路が夏に涼しい理由:科学的・気象学的分析
1. 太平洋に面した「海洋性気候」
釧路は北海道の東部沿岸に位置し、太平洋に面した都市。この地理的特性が、釧路を夏でも涼しくしている最大の理由のひとつ。
太平洋は**比熱(熱しにくく冷めにくい)**が高いため、夏でも海水温が上がりにくい。
海風(海からの風)が陸に吹くことで、冷たい空気が流れ込む。
このため、釧路は**海洋性気候(海洋の影響を強く受ける気候)**となり、夏の気温が抑えられる。
気象庁データ:
釧路の8月平均気温は**約19.0℃**前後(東京は約27.0℃、帯広は約22.5℃)。
日本の中でも**「真夏日(30℃以上)」が極めて少ない都市**。
2. 親潮(寒流)の影響
釧路沖には**千島海流(=親潮)**が流れていて、これが海水と空気を冷やしている。
親潮は低温・高栄養の寒流で、夏でも表面海水温が低く(15〜18℃程度)、沿岸気温に大きく影響。
この冷たい海水が海面付近の空気を冷却し、さらに霧や雲を発生させやすい。
海水温が20℃以下だと、上空との温度差が大きくなり、**冷たい海霧(沿岸霧)**が発生しやすくなる。
3. 低い日射量と霧の多発
釧路は全国有数の霧の発生地。霧が出ると太陽光が遮られるため、気温上昇が抑えられる。
特に夏場(6月〜8月)は、海霧が連日発生することも。
これにより、晴天率が低く、日射量が少ない。
例:
夏の霧日数(6〜8月合計):釧路では平均30日以上(つまり毎日のように霧)。
霧が朝から晩まで続く日もある。
4. 湿度は高いが気温が低い「冷涼多湿」な気候
釧路の夏は冷涼だけど湿度が高い。これは太平洋沿岸から湿った空気が流れ込むから。
日中の気温は低め(20℃前後)でも、湿度が高いため、体感的にはひんやりする。
夜間はさらに冷え込み、15℃前後になることも多い。
5. 太平洋高気圧の縁に位置する=晴れにくい
日本の夏は、太平洋高気圧が日本列島を覆うが、釧路はその勢力の北縁=縁辺部に位置している。
高気圧の中心は晴れて暑くなるが、縁辺部は湿った空気が流れ込みやすく、曇りやすい。
これも、夏の冷涼さ+日照不足に拍車をかける。
まとめ:釧路が涼しいのはこういう理由!
要因 内容
・海洋性気候 …太平洋に面していて、海風で気温が抑えられる
・親潮の影響 …冷たい海流が海水温と空気を冷やす
・霧の多発… 日射を遮る霧が頻繁に発生し、気温上昇を防ぐ
・太陽光の少なさ …曇天・霧天の連続で、日照時間が非常に少ない
・高気圧の縁辺に位置している 湿った空気が流れ込みやすく、晴れにくい
補足:夏に「避暑地」として釧路が注目される理由
釧路では30℃を超える日は年に0〜1日程度。
熱帯夜(最低気温25℃以上)はほぼ存在しない。
そのため、本州からの観光避暑地・リモートワーク拠点として人気が高まりつつあるよ。