キタキツネは、その愛らしい姿から日本では特に北海道や樺太で人気を集めてきた動物で、近年では青森県でも見られるようになっている。1978年にはドキュメンタリー映画「キタキツネ物語」が公開され、多くの人々に親しまれてきた。また、野生のキタキツネは人が住む場所にも現れることがあり、その身近さが人々に愛着を抱かせていた。
しかし、キタキツネが「エキノコックス」という寄生虫を媒介することが広く知られるようになり、これに対する警戒が高まった。エキノコックス症は、キタキツネの体表面や糞に含まれる虫の卵を人が摂取することで感染し、昭和10年代にはすでに患者が報告されている病気だ。1994年には、旭山動物園でエキノコックス症に感染した動物が発見され、一時的に営業が中止されたこともあった。
これをきっかけに、北海道の住民はキタキツネを「恐い野生動物」として認識するようになり、特に山里の道路や観光地などで見かけた際には注意を払うようになった。一方で、本州からの観光客は、そのかわいい外見に惹かれ、「こんなに愛らしい顔をしているのに…」と、あまり恐れないことも多いようだ。
キタキツネは昔から人々に親しまれてきたが、その危険性についても認識されるようになり、扱い方や接し方が変化してきたのである。